個性

私は、日本生まれ日本育ちの日本男児であり、日本国法・米国NY州法弁護士であり、家族を持ち、アメリカや南米で生活をしたことがある(またはしている)。弁護士といっても、企業法務を中心とする業務を行っており、個人を顧客とした案件に関する経験は数少ない。

人により、また場所により、これらの個性をプラスに受け止めたり、マイナスに受け止めたりする。自分では自分の人生に誇りを持って生きようとしているものの、どのようにこれを伝えるのかというニュアンスは非常に大事だということを日々意識しなければ、人からの共感は得がたい。当たり前のことになるのだが、話す相手によって、当然前提となる知識や認識に違いがあり、それを理解しつつ、話すということは簡単なように見えてもなかなか難しいこともある。

ということで、自戒の念をこめて、個性を強調すること、それを伝えることの難しさと大切さをここに残しておく。

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英文契約書のススメ(履行場面の文言について)

ブラジルまたはブラジル法のトリビア的知識ではなく、英文契約書の基本について、自身でも整理しつつ記載してみる。日本語でも同様のことだが、契約書の用語と日常的に使われる用語は異なる。ちょっと具体例を挙げて考えてみたいと思う。これらの例と記載は、いずれも『A Manufal of Style for Contract』(Kenneth A. Adams)より引用または参照しているものであって、マニアやプロフェッショナルはそちらでしっかりと確認していただきたい。

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ブラジル – 税務・CNPJに関する改正

ブラジルでは、Receita Federal(連邦税務局)が、主な連邦税制を管理し、CNPJと呼ばれる法人用税務登録番号をもって法人の納税を管理し、CPFという個人用納税者番号で個人の納税を管理している。この関係をもって、ブラジルでは、法人を設立する際(そのほかにも資産を取得する際であっても)、CNPJを取得する必要があり、海外企業がブラジルに法人を設立する場合は、出資者となる海外企業もCNPJの取得が義務付けられている。

ブラジルで生活するうえでつきまとうこの税の問題がより複雑化しそうなのが、今回マネーロンダリングの防止を目的として制定された、2016年IN1634号である。

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ブラジル – ブラジルでは年収でなく月収で考える

日本では貧富の差を話すときに、年収で話されることが多かったように記憶している。ところが、ブラジルに来てからは、よく月収の話をするようになった。例えば、以下のような会話の流れである。

  • 私:「ブラジル人のお金持ちってほんと凄いね。家はサンパウロとサントスに持っているというひとが多いし、それぞれの家にメイドがいたりするしさ。これに対し、日本人のお金持ちはお金持ちと言ってもね…」
  • ブラジル人(ブ):「ちょっと待って、そのひとはいくらもらっているひとのお話しているの?」
  • 私:「ひとにもよるけれども、日本だと、だいたい年収1000万円以上もらっているひとはお金持ちって話になるよ。」
  • ブ:「ちょっと待って、年収じゃなくて、月額で言ってもらってもいい?」
  • 私:「単純に12で割るならば、おおよそ月額83万円(1ドル100円計算するならば、8300ドル程度)だよ。」
  • ブ:「それはブラジル人のなかであったとしても相当リッチね。(下記2013年下期の表であてはめてみても、上位1%に当てはまる。なお、2013年下期のレアル・円の為替レートはおおよそ41円から44円の間である)多分そのひとがそのままの給料でサンパウロに住めたら、一人のメイドは少なくとも週のうち何日かは来てもらえるわね。」

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ブラジル – e-Commerce・その2

ブラジル e- Commerceについては、以前こちらでも触れたことがあるが、そのときは、インターネット関連法は何なのか?準拠法はどのように決定されるのか?インターネット上の契約の成立要件は?といった概略について触れた。ここでは、サイトによる名誉毀損発生時のISP(インターネット・サービス・プロバイダー)の対応やプライバシー問題についれ触れたいと思う。

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ブラジル – 家族法:ブラジルでの結婚

ブラジルの契約書を見ると、契約当事者の特定に、契約当事者が個人である場合、住所氏名はもちろんのこと、財産分与(regime de separação total e absoluta de bens)があるか否か、婚前契約(prenuptial agreement)の締結の有無まで記載されるほか、既婚・未婚の有無、職業、RGの番号、CPFの番号まで記載される。

例えば、

XXXX, Brazilian, divorced/married undere the separation of property regime (regime de separação total e absoluta de bens), in accordance with articles 1,678 and 1,688, as well as article 1,647 of the Brazilian Civil Code, and Prenuptial Agreement, drawn up in Book XX, Page XXX of the Civil Register of Natural Persons and Notary Public of XXX, court of XXX/XX, and Declaratory Public Deed drawn up in Book XX, Page XXX of the same registry, business manager/enterpreneur, bearer of the Identity Card RG XXXXX and enrolled with the Taxpayer Registry of Individual (CPF/MF) under No. XXX, with office at XXX.

といった形で記載される(英訳版)。日本の実務では、契約書における記載は、そこまで書かない場合がほとんどであり、なかなか興味深い。現地の弁護士に聞くと、必ずしも記載せずとも無効とはならないだろうが、通例であり記載しておいたほうが法的有効性にかんがみ安全だという。

というなか、ここで記載されている婚前契約や結婚について、本稿では触れてみたいと思う。

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ブラジル – Corporate:定款記載時の注意

日本では、事業目的は定款に記載しなければならない(日本会社法第27条)。ということで、日本の株式会社の定款においては、将来の事業の柔軟な拡張を視野に入れ、幅広な定款を記載する例がいくつか見受けられる。しかし、ブラジルでは必ずしも同じように考えてはいけない。

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ブラジル – 憲法(4):基本的人権とその保障(3)

憲法全体の目次はこちら。第2部:基本的人権とその保障の全体についてはこちら。今回は、第2部基本的人権とその保障のうち、信教の自由のうち政教分離・検閲の禁止・プライバシー権・住居の不可侵・情報へのアクセス権について触れる。

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ブラジル – 認証不要条約への加盟(2016年8月より発効)

ブラジルは、2015年12月2日に「外国公文書の認証を不要とするハーグ条約」(認証不要条約)に111カ国目として加盟し、これにより、ブラジル連邦政府は2016年Decree第8660号を制定した。認証不要条約は、ブラジルに対し、2016年8月14日より効力を生じることとなる。今回は、この認証不要条約によりどのように実務に影響が出るかについて、記載したいと思う。

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