ブラジル – 税務:RERCT

ブラジルの税務は複雑だ。色々報告しなければならないことがある。日本、アメリカと確定申告をしてきた自分でも、いまだ完全に把握していないポルトガル語での確定申告は不安一杯だ。特に、全世界の資産(少額のものを除き)を報告しなければならない。面倒だ。なぜブラジルにも、日本の銀行口座の中身を教えなければならないんだ。微微たる利息がついているものをあえて報告するなんて、面倒じゃあないかと思ってしまう。ブラジル人もほかのひとも皆きちんと報告しているのか?

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ブラジル – 税務:近年の法改正(TFJ/PTR)

2016年9月14日、Normative Instruction RFB 2016年1658号が公布された。これはブラジル連邦歳入庁(RFB)により定められたものだ(なお、この変更は10月1日に施行される)。このRFB令は、RFB令2010年1037号を修正するものであって、従前優位な課税管轄や税優遇(tax privileges)に関する取扱いを変更するものである。

2016年1658号は、変更を加えていたのはもっぱら以下の点である。

  • Curacao(キュラソー島)、St. Martin(セント・マーチン島)およびIreland(アイルランド)は所得税による課税がされないまたは20%を下回る税率での課税であり、更には法人の株主等の構成員情報へのアクセスを禁止する地域(これを特別課税管轄 – TFJ)として上げられていた。オランダ領アンティルやセントクリストファー・ネイビスはこれに含まれないことが明らかとされた。
  • 税優遇特区(PTR)につき、オーストリア法に基づく持株会社の場合はその地域での実質的な経済活動の内容にかかわらず、これに含まれることとされることとなった。

注意すべきなのは、TFJやPTRの意義自体は立法上手当てされているにもかかわらず、現在の立法はRFB作成のこれらに関するリストについて言及されておらず、立法とこれらリスト上の管轄との整合性が文言上一致していなかったという点である(ブラジルらしいといえば、ブラジルらしい点の一つに挙げられよう)。

このため、RFBは長年の間、これらのリストを更新等するたびにこれらをガイドラインとして使用し続けてきた。このような実務からして、上記RFB令による変更は今後の実務の変更を促すものとして考えられるだろう。

ブラジル – 税務:略称のまとめ

ブラジルの税金は複雑で、連邦・州・市とあり、その種類だけで50以上あると言われている。現地で税金に関する問題を聞いたときも、ぱっと聞くだけでは、略称しか話されておらず、まだまだ未熟な私は混乱する。「IRPJは…」「IEは…」と単語を聞いただけでピンと来るように、ここで略称を一挙に整理しておこう。なお、ブラジルの連邦税務当局・連邦国税庁(Receita Federal do Brasil)のホームページはこちら

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ブラジル – 関税・税務:ドローバック制度

ブラジル・サンパウロには、日系企業を中心にした商工会議所、ブラジル日本日本商工会議所(Câmara de Comércio e Indústria Japonesa do Brasil)がある。日系企業が、同業者の親睦を目的に設立されたのが、1926年だ。私自身、ロサンゼルス・ボゴタ・サンパウロの3都市しか海外では居住・就労したことがないが、ここまで活発的な商工会議所はなかなかなく、勉強会・セミナー・その他親睦会とその活動は2016年現時点でも非常に活発的だ。

つい最近そこで、商工サービス省(Ministério de Indústria, Comercio Exterior e Serviço)の役人を招く形で、ドローバック制度に関するセミナーが開催されたので、その内容について説明しておこう。なお、配布資料のリンクもこちらにて両言語分(日本語ポルトガル語)貼っておく。当日は、Câmara会員企業200社が参加したほか、自動車部品工業会(Sindipeças)からも50社ほどが参加し、大変大きなセミナーであり、各企業の関心度の高さが伺える。

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ブラジル – 税務・CNPJに関する改正

ブラジルでは、Receita Federal(連邦税務局)が、主な連邦税制を管理し、CNPJと呼ばれる法人用税務登録番号をもって法人の納税を管理し、CPFという個人用納税者番号で個人の納税を管理している。この関係をもって、ブラジルでは、法人を設立する際(そのほかにも資産を取得する際であっても)、CNPJを取得する必要があり、海外企業がブラジルに法人を設立する場合は、出資者となる海外企業もCNPJの取得が義務付けられている。

ブラジルで生活するうえでつきまとうこの税の問題がより複雑化しそうなのが、今回マネーロンダリングの防止を目的として制定された、2016年IN1634号である。

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ブラジル – 税務(6) 資産税

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  • 基礎用語
  • (1)法人所得税等
  • (2)間接税等
  • (3)商品輸入税
  • (4)サービス輸入税
  • (5)金融取引
  • (6)資産税

I – 不動産譲渡税(ITBI)

ITBIは、不動産等を売買・譲渡する際にかかる税金である。一般的には、当該対象不動産が存在する市区町村により決定される料率を、当該対象不動産の市場価格に乗じた価額が課税されることとなる。

II – 都市圏不動産に対する課税(IPTU)

IPTUは、都市圏内に存在する土地または建物の所有・支配・占有等をしていることに関し、課税されるものであり、当該対象不動産の評価額に沿って課税される。当該不動産の所在地やその種類によって課税料率は異なる。

  • Ownersship vs. Possession vs. Control
    • Ownership: 所有権
    • Possession: 占有権
    • Control: 支配

III – 郊外圏不動産に対する課税(ITR)

ITRは、連邦資産税であり、都市圏外にある不動産の所有・占有等に対し、課税されるものである。税率は、その評価額やサイズ、所在地等により異なるものの、おおむね0.03%から20%の間である。

IV – 贈与・相続税(ITCMD)

贈与・相続税は、各州により税率が異なるが、いずれにせよ連邦政府の定める一定の料率を上回ることがあってはならないとされている。なお、現在のところ、ここにいう連邦政府の定める一定の料率は8%(2015年末時点)である。

 

 

ブラジル- 税務(5) 金融取引

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  • (3)商品輸入税
  • (4)サービス輸入税
  • (5)金融取引
  • (6)資産税

金融取引に関する租税(Tax of Financial Operations)はIOFとも呼称される。以下、各種取引ごとに記載する。

I – IOF/Credit(借入)

企業・個人間および企業間の金銭消費貸借契約は、IOFの課税対象となる。ほとんどの取引は、日利0.0041%であり、総計1.5%である(なお、ブラジル政府は、いかなる場合であっても、この税率を最大日利1.5%まで引き上げることのできる裁量を有している)。これについては、借主が法人か否かを問わない。

上記に加え、0.38%の課税が加えられる。

II – IOF/Foreign Exchange(為替)

ブラジル国内にて実行されるいかなる外国為替取引についても、IOF/Exchangeの課税の対象となる。例えば、日本人学生が留学目的でブラジル国内に滞在し、その学生の両親が日本人学生のために送金したとしても、この課税の対象となる。課税料率は、ほとんどの取引において0.38%である。なお、上場会社の資本に関する送金の場合には、0%である。

また、注意すべきは、ブラジル政府は、このIOF/Exchangeの料率をいつでも25%まで上げる裁量を有しているという点である。

III – IOF/Insurance

保険プレミアムに応じ、0%から7.38%が適用されるということになっているが、現状の料率設定からすると、ほとんどの取引において、7.38%が適用されている。

IV – IOF/Bonds・Securities

IOF/Securitiesは、証券等が関連するいかなる取引(株式・証券・コモディティ取引等)においても生じるものである。ほとんどの場合、この課税料率は、0%である。

なお、ほかの項目と同様、ブラジル政府は、この課税料率を最大日利1.5%まで引き上げることのできる裁量を有している点について注意しておきたい。

 

ブラジル- 税務(5) サービス輸入税

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サービス輸入税については、I – WHT、II – CIDE、III – PIS/COFINS、IV – ISS、V – IOFの五種類があるところ、ほかの項とのかぶりがあるため、ここでは、WHT・CIDEについてのみ触れることとする。

I – WHT(源泉所得税 – Withholding Tax):外国に支払われる所得にかかる連邦税

源泉徴収税は、原則として15%(または25%・受益者が一定の地域に本拠を構えている場合)である。

II – CIDE(経済領域介入負担金):ロイヤルティーの支払いおよび技術サービスにかかる連邦税

CIDEは、ロイヤルティ・技術サービス等に関し、10%の課税がなされる。

 

 

ブラジル – 税務:ISS – Import

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さて、今日は、サービス輸入税に関する市税であるISSと輸入の関係について、検討を加えることとする。

ブラジル連邦憲法第156条には、市区町村へ税に関する権限の一部を委譲する旨の規定がある。

Art. 156. Compete aos Municípios instituir impostos sobre:

(…)

III – serviços de qualquer natureza, não compreendidos no art. 155, II, definidos em lei complementar. (Redação dada pela Emenda Constitucional nº 3, de 1993)

(…)

§ 3º Em relação ao imposto previsto no inciso III do caput deste artigo, cabe à lei complementar: (Redação dada pela Emenda Constitucional nº 37, de 2002)

(…)

II – excluir da sua incidência exportações de serviços para o exterior. (Incluído pela Emenda Constitucional nº 3, de 1993)

第156条(柱書) 市区町村は課税徴収権限を以下のとおり保有する

  • 第3号 第155条第2項に含まれないサービスの全てであって、補則法により定められているもの

第3項 第3号の定めにいう補則法は以下のとおりのものとする。

  • 第2号 サービスの輸出へは適用されないものとする。

上記憲法の定めを受けて、制定されている補則法(補則法116/03号)の関連場所は以下のとおりである。

“Art. 2 O imposto não incide sobre:

I – as exportações de serviços para o exterior do País;

(…)

Parágrafo único. Não se enquadram no disposto no inciso I os serviços desenvolvidos no Brasil, cujo resultado aqui se verifique, ainda que o pagamento seja feito por residente no exterior

第2条 以下の事項については課税されない。

第1号 海外諸国へのサービスの輸出

(補則条項)第1項に定めるサービスとは、ブラジル国内により提供され、同国内に生じるサービスであって(serviços desenvolvidos no Brasil, cujo resultado aqui se verfique)、支払いが海外でなされるか否かを問わない。

ここでいう「サービス」はどこまで含まれるのか?一般的に言えば、サービスによる便益が生じる地ということになろうが、事件例からすると違う解釈もありそうだ。いくつかの具体例がある(リンクが見つかったものはあわせて、ハイパーリンクをつけておくことにする)。

なお、ISSにかかる税率は、サービスまたは地域により異なり、2%から5%である。

ブラジル – 税務:概要

ブラジルの税は何度も言うが複雑極まりない。しかしながら、概観を敷衍するために、以下のとおり、税の種類ごとにわけて、整理してみた。PIS/COFINS(ピスコフィンズ)は何度も出てきてしまっており、整理の仕方に工夫の余地はありそうだが、それは今後の課題としよう。

(1) 業務に関する直接税

(2) 間接税等

  • 製品製造税(IPI):連邦付加価値税(VAT)
  • 商品およびサービスの流通税:州付加価値税
  • サービス税(市区町村によるもの)

(3) 商品輸入税

  • 輸入税
  • PIS/COFINS
  • IPI
  • ICMS

(4) サービス輸入税

  • 源泉所得税(WHT):外国に支払われる所得にかかる連邦税
  • 経済領域介入負担金(CIDE):ロイヤルティーの支払いおよび技術サービスにかかる連邦税
  • PIS/COFINS – Import:サービスの輸入にかかる連邦税
  • ISS – Import:サービスの輸入にかかる市税
  • IOF – Foreign Exchange:外国から武ブラジルへの資金移動またはブラジルから外国への資金移動にかかる連邦税

(5) 金融取引

  • IOF/Credit(借入)
  • IOF/Foreign Exchange(為替):上記(4)も参照
  • IOF/Insurance
  • IOF/Bonds

(6) 資産税

  • 不動産譲渡税(ITBI)
  • 都市建物土地税(IPTU)
  • 車両保有税(IPVA)
  • 相続贈与税(ITCMD)