ブラジル:Non-compete(競業避止義務)条項の有効性

日本法上、取引基本契約やJV契約等において、競業避止義務を負わせる規定を入れることはよく検討される。競業避止義務は、通常無制限に有効なものではなく、労働法や競争法等の制約を受けることがあり、当事者の地位や制限する内容・期間等とあわせて検討されることが通常だ。

それでは、ブラジルではどうなのか…。とりあえず、ここでは話をシンプルにするために、競争法の話を除外し、契約法・労働法の観点から考えてみたいと思う。

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ブラジル – 労務:おさらいと基本(その2:「労働者 / empregado」の意義)

ブラジルの労働法については、いままで何回も触れてきたところではあるが、改めて、基本的なところの復習ということで、今回は、「労働者/employee」の異議について考えてみようと思う。

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ブラジル – 労務(アップデート:アウトソーシング/2017年法第13429号)

ブラジルの政治・経済の最近の動きはよく分からない。5月18日ころに、テメル大統領に関する政治腐敗のニュースがあったことに驚き、また同大統領についての罷免の可能性が報道された。

翌日たまたま東京に来ていたブラジル人の友達に話を伺ったが、罷免の可能性は否定できず、十分にあり得るといった話だった。昨年前大統領のジルマ氏が罷免されたばかりで、そのジルマ氏にかわってその任期2018年まで務めることになっていたテメル大統領(PTではなくPMDB党所属)まで罷免される可能性があるということは、まだブラジルの政治腐敗の問題解決には時間がかかりそうだということも示唆する。

と、まだまだ混乱が続きそうなブラジルだが、ここで最近改正された労働法について一つ朗報を…。

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ブラジル – 労務:裁判見学(サンパウロ・セントロ)

法律といえば裁判という印象が強い。そして、ブラジルの労務といえば、ニューヨーカーからは「カリフォルニアばりに」労働者保護が進んでいると笑いながら指摘される。2014年には新規の訴訟が235万件、2015年には新規の訴訟が265万件ほどと、労務訴訟の数は10万人に100人弱とされている(なお、米国では全訴訟で10万人に5~6人ほど、英国では3~4人ほど、日本では1~2人ほどとされている)。

ということで、前はリオデジャネイロで労働裁判所を見学してきたが、今回は懲りなくサンパウロで労働裁判所(R. da Consolação, 1272)を見学してきた。

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ブラジル – リオデジャネイロ・労働裁判所(2)

以前ブラジルのリオデジャネイロ州・リオデジャネイロ市にある労働裁判所について触れた。ところ、今回は、裁判官学校や高等労働裁判所について触れてみたいと思う。

労働裁判所は(その歴史的沿革から)従前行政側の機関であったということもあり、通常の民事裁判所や刑事裁判所とはまるでその仕組み・構造が異なる。裁判所ですら、古い建物は労働雇用省と併設される形で設立されていることも多いと伺っている(リオデジャネイロ・労働裁判所はブラジル国内で一番古い労働裁判所ということもあって、労働雇用省と同じ建物であった)。なお、(労働法遵守のための)労働検察官という立場もあり、労働雇用省の管轄下と思いきや別途の組織下であるらしい。

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ブラジル – リオデジャネイロ・労働裁判所

ブラジルのリオ・デジャネイロにある労働裁判所(Tribunal Regional do Trabalho 1a Região)および高等裁判所等に行ってきた。ウェブサイトはこちら

「1a」とは英語でいう1stに等しい意味だが、もともとリオ・デジャネイロがブラジルの首都であった関係で、一番最初に出来た労働裁判所という意味があり、1stと付されている。なお2aはサンパウロにある。

さてさて、見学してきた労働裁判所の様子を説明しておくこととしよう。ブラジルにいる日本企業も、また日本企業の出資する企業も、多くの労働紛争を抱えているのだから(統計上おおよそ10人に1人が労働裁判を抱えている計算と言われている)、これをご覧いただいている日本人の誰かのご参考になるのではないかと信じて。

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ブラジル – 労務:従業員等の雇用

以前、ブラジル労働法の概要について触れた。CLTという労働基本法ともいうべき法律があることや、給料は13ヶ月分(クリスマスボーナス)支払わなければならないということや失業保険に相当する積みたて(給与の8%相当額)の義務等ブラジルコストがあることも触れてきた。

ここからは、一般論というよりは少し踏み込んで、雇用を開始する時またはその事前準備について触れてみたいと思う。これから、ブラジルにて従業員を雇用している場合または雇用しようとおもう日本企業の少しでもお役に立てればと幸いである。

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ブラジル – 労務:13ヶ月目の給与(クリスマスボーナス)・FGTS

クリスマスボーナス(13ヶ月目の給与とも言われる)については、以前2回ほど触れてきた。

ここで、月次に従業員に対し支払われる金銭のほかのものであって、二回に分けて支払うことが可能であり、具体的には、2月から11月までの間の1回と12月の1回の計2回であると述べてきた。もう少し、この特殊なブラジルにおけるクリスマス・ボーナスやFGTSについて改めて触れてみたいと思う。

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ブラジル – 労務:労働組合

ブラジルでは労働組合が強い。ストライキも盛んだ。私が2015年9月から来ているが、ほぼ毎月何かしらの分野でストライキが起こっている印象だ。公共交通機関・銀行・税関・病院・学校等各種業種ごとに起こるストライキは、日本人の私からすると異様なように見えたが、この国では普通のことらしい。知り合いのブラジル人に言わせれば、まるで季節の風物詩かのように、「あぁ、この時期は○○のストライキが多いんだよ。」となかばあきらめ感をただよわせながら語っていたことが印象深い。さらには、ストライキ期間中であっても、給料は支払わなければならない(いわゆるノーワーク・ノーペイの原則はブラジルではそのまま主張できない)。さてさて、このようにブラジルの強い労働組合について、もう少し記載してみよう。

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ブラジル – 労務:訴訟

ブラジルでの労務は訴訟が多い。法律が労働者保護よりなことはもちろん、裁判所の判断も労働者よりなことが多く、成功報酬型で原告をつのる弁護士が多いこともその理由としてよく挙げられている。というところで、ブラジルの労働裁判について触れておきたいと思う。

なお、労働裁判とは、民事裁判とは異なる特別裁判である(日本では労働審判というものがあったり、民事裁判所において労働事件集中部というものがあるが、これは選択的にこれらにおいて訴訟等を起こすことを可能にするのに対し、ブラジルでは労務関連の裁判は労働裁判においてのみ行われる)。

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