ウジミナス(Usinas Siderúrgicas de Minas Gerais S.A.)は、ブラジル・ミナスジェライス州(サンパウロ州北部)にある(高炉メーカーと呼ばれる)鉄鋼メーカーである。ブラジル内鉄鋼メーカーでは、粗鋼(Crude Steel)生産第2位の規模を有する(2014年時点・年間600万トンほど)。2014年第1位はGerdau S.A.で1900万トンほど・第3位はCompanhia Siderúrgica Nacional (CSN)で540万トンほどである(そのほかに年間300万トンを超える規模の業者はブラジルにはいない)。(Worldsteel Associationによる)
1958年1月に日本とブラジルの合弁で設立されたこの会社(旧新日本製鉄の技術援助も含む)は、1962年に高炉創業を開始し、1991年に民営化。2016年現在はブラジルのほか、ニューヨーク・スペインの証券取引所に株式を上場している。
I – 取引の概要等時系列
2006年
- 12月:新日鉄が日本ウジミナスの株式を追加取得し、子会社化し、その影響でウジミナスは新日鉄の持分法適用会社に
2011年
- 11月27日:アルゼンチンのテルニウムが、ウジミナスに27.7%出資すると合意した旨発表
- 計26%を出資するブラジル現地財閥のボトランチン(セメント大手)、カマルゴ・コレア(建設会社)の両グループの全株式を取得のほか、ウジミナス従業員の年金基金保有株の一部の買取
- 11月28日:新日鉄も出資比率を1.7ポイント引き上げて、29.2%にすると発表
- 当時、新日鉄とテルニウムは、メキシコ合弁事業を通じて協力関係にあった
- 2013年8月には、メキシコで自動車用鋼板の合弁工場立ち上げ
- なお、当時、CSNによるウジミナス買収が報道されていた(同社は2011年1月以降、段階的に議決権付株式11.7%・優先株20.1%を市場で取得していた)
- 当時、新日鉄とテルニウムは、メキシコ合弁事業を通じて協力関係にあった
2012年
- 1月ころ:ウジミナスの経営にテルニウムが参画。株主間契約においては、新日鉄住金を含む日系側が46%・テルニウム側が43%・従業員年金基金保有が10%超を保有していた
2014年
- 4月:役員改選時期だが、新日鉄・テルニウム間で人事につき、合意できず、エグレン氏が暫定CEO
- 7月~9月:EYとデロイトの2社により、報酬問題に関する社外監査実施
- 9月:パウロ・ペニード議長裁定でエグレン氏等3役員(いずれもテルニウム側役員)の解任を可決(役員審議会で、「不正な役員報酬の受領があった」として議論)
- テルニウム側はこの解任に関し、仮処分を申請(のち棄却)
- 10月:テルニウム、年金基金から10%超を取得し、筆頭株主に浮上。
- 10月:上記解任された3役員が、パウロ・ペニード議長に対し、訴訟を提起
2015年
- 4月6日:臨時株主総会
- 5月5日:ミナスジェライス州裁判所は、解任を妥当とし、テルニウム側の訴えを退ける形で判決を下した
2016年
- 3月12日:新日鉄が10億レアル(約300億円)の増資を最大で全額引き受ける旨発表
II – 今後と雑感
ブラジル経済の動向もあり、ウジミナスの収益状況は芳しくなく、テルニウムとの主導権争いはなかなかチキンレースといった状況のもようだ。上場会社でありながらも、株主間契約の実効性が幅広く認められるブラジルならではの、主要株主間の争いとして、非常に興味深い案件の一つである。