ブラジル担保法制・担保権(security interest)について触れてみる。ブラジルの不動産に関する担保には、抵当権(Hipoteca)や譲渡担保(Alienação Fiduciária)といったものが代表的なものとして挙げられるところ、これらについて触れてみるとする。
担保権に関する英語と日本語の訳をうまく使い分けることも難しい。例えば、M&Aの契約(株式譲渡契約)上の表明保証の文脈で、以下のような実例があるところ、どう訳すのが適切かどうかふんふん悩むというのが、私の経験上よくあった。
Seller is the lawful owner of all the Company’s Stock, free and clear of all security interests, liens, encumbrances, pledges or other charges.
(仮訳)売主は、いかなる担保権、リーエン、負担、質権またはその他の担保権の設定がない状態で、本件会社株式の全部の合法的所有者である。
と、仮訳をささっと書いてみたが、lienを「リーエン」と訳するのが適切なのか、日本法上「リーエン」も「負担」などという用語も存在せず、どちらかといえば先取特権等にした方がいいのではないか、いやはや、そもそも訳として成立していないのではないかや、chargesとsecurity interestsを同じ「担保権」と訳してしまっているのだがそれで問題ないかと悩みはつきない。
ということで、まずは英法における担保権について日本法と比較しながらごく簡単な説明を加えたうえで、ブラジル担保法制について触れていくこととしよう。
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