ブラジルにおける不動産取得につき、外資規制があることについては、以前その概略につき、本ブログに投稿した。今回は、もう少し詳しく触れることとしよう。
外資規制の対象となる土地は、以下のとおりであり、ここでは郊外と国境付近について触れることとしよう。
- 郊外
- 国境付近
- 軍所有地(46年法9760号・第2章・第205章)(大統領より権限の委譲を受けた財務省による承諾が必要)
- アマゾン地域(01年決定52号・Corregedoria Geral de Justiça do Estado do Amazonas)(原則として、郊外土地と同様の制限を受けるが、現在国会において特別な制限をかけることが議論されている)
I – 郊外
(1) 郊外土地規制の歴史
1971年連邦法5709号および1974年規則74965号により、外国人(個人および法人を問わない)による郊外の土地取得は、一定の制限が課せられている。同法第1章(セクション)の第一文には、ブラジル企業であっても、過半数の株式が外国人に保有されている場合は、この制限を同様に受けるとされている。数年後、1988年ブラジル憲法(第171章(セクション)を含む)が制定され、そのなかでも、ブラジル資本の会社との区別が明示するようになっていった。
また、1993年連邦法8629号により、郊外土地の賃貸借関係についても、同様の規制が課せられるようになった。
これらに関し、連邦政府のジェネラルカウンセル事務局は、意見書GQ-22号を出している。当該意見書によれば、連邦憲法は、ブラジル資本の会社に関して与えられている一部の特権については、外国人に支配されているブラジル企業に対し憲法上の制約を課すことを許すとしている。なお、この意見書は法的拘束力は有しないとされている(なぜなら、同意見書については、法的に正式な公告手続が経られていないからである)。
その後、1995年連邦修正憲法第6号(EC6/95)により、上記意見書に関する連邦憲法第171章(セクション)につき廃止されたのだが、1995年から2年後の1997年に、連邦政府のジェネラルカウンセル事務局は、新たに意見書GQ-181号を提出した。この意見書は、(上記連邦憲法第171章の廃止にもかかわらず)意見書GQ-22号をより強固にさせるものであり、外資規制の維持を謳ったものであった。当該意見書は、意見書GQ-22号とは異なり、法的拘束力を有するものであり、1998年12月17日大統領より認可され、1999年1月22日官報での公告がなされた。
その後、2010年8月19日大統領は新たに意見書LA-01号を認可し、当該意見書もまた2010年8月23日官報での公告がなされた。この意見書では、より外資規制が幅広にされており、直接・間接に外国人に保有されるブラジル企業であっても、郊外の土地取得に関する外資規制は適用される旨述べている。
なお、当該新意見書LA-01号は官報公告日に効力発生しており、2010年8月23日までに行われたことに関しては適用されない。
(2) 規制の概要
土地の取得であろうと、土地の賃貸借であろうと、外国人(個人、法人を問わず、また直接のみならず、間接保有するブラジル法人)の郊外土地に関しては、一定の制限があるということは上記に述べたとおりである。
まず、外国人投資家は、1人の外国人等の郊外土地所有については、最大一筆まで許される。但し、当該土地のエリアが、ブラジル都市計画機関(Instituto Nacional de Colonização e Reforma Agrária(INCRA))により定められている3つを超える区画(Módulos de Exploração Indefinida(MEI))を保有しないことが必要である。
前記新意見書LA-01号によれば、この3区画を超える場合、郊外土地の外国人投資家等による取得・賃借は71年法5709号により規制されることとなり、当該取得等に先立って、INCRAによる事前許可を受ける必要がある。
上記71年法5709号による規制の概要は以下のとおりである。
- 郊外土地は、農業や酪農、産業・都市計画その他のプロジェクトの実行のために存するのであって、これらプロジェクトは国土省(Ministry of Land Development)および産業・外国取引省(Ministry of Development, Industry and Foreign Trade)の事前の許可を得なければならないのであって、また当該プロジェクトは土地取得等を行う会社の事業目的に則したものでなければならない。
- 外国人投資家等に保有される郊外土地は、各自治体において4分の1を超えてはならない。
- 同一国の外国人投資家等に保有される郊外土地は、各自治体において、上記外国人投資家等に保有される郊外土地のうちの40%を超えてはならない。
- (外国人投資家等に保有される)50を超える区画(MEI)が、一続きの地域において存在してはならない(71年法5709号)。また、93年法8629号に従い、100を超える区画が存在してはならない場合もあるので、この法にも別途注意をする必要がある。
これらの規制は、外国企業が郊外土地を買収する場合にはもちろんのこと、外国企業が郊外土地を保有するブラジル企業を買収する場合にも同じように適用される。
なお、これらの法令の要求に従わない郊外土地の取得については、当該行為を無効とさせられうるので注意が必要である。
II – 国境付近
国境より150キロメートル圏内の土地については、ブラジルの国防上重要地帯とされている。郊外土地であって、国境付近である場合は、上記I郊外土地規制のほかに、この国境付近地帯に関する土地規制も重複してかかることとなる。
この点、外国人投資家等(ブラジルに本居を構える外国人、ブラジルにて事業を行う法人、過半数の資本が外国人による保有されているブラジル企業を含む)が、国境付近土地の取得、賃借、抵当権設定、地上権等の地役権の設定等を行うためには、Conselho de Segurança Nacionalの事前の許可を得なければならない。
この法令の要求に従わない場合、当該売買等の行為が無効とされうるのに加えて、当該取引価額の20%を罰金として科せられる可能性がある。